福岡の街をテーマに特別対談

おそろしく暑かった今年の夏も、もう終わりだろう。
そろそろ秋風も吹きはじめ、空もほんのり秋雲に…。
旅に出たくなるのは、そんなとき。

山や海への、計画どおりのレジャーより
さわやかな風に誘われるまま、
目的を決めず、ふらり電車に飛び乗る週末…。

この季節には、そんな気楽さがちょうどいい。

「そんな気楽さが、今、とても面白い旅になるよ」と、
教えてくれたのは、『SCRAP』の吉村さんだ。
街で話題の「福岡謎解きトレイン」を作った人、である。

この街を知らない、その吉村さんが、
この街をよく知る「Y氏」に出会い、
“化学反応”が、起こった!

電車にのって、謎を解くほどに、
この街をよく知る期間限定のリアル脱出ゲームだ。
それはそれは、じつに愉快な「街旅」で。

『福岡謎解きトレイン』を作った人、吉村さんと、 『Y氏は暇人』なんて珍名ブログで、 街の谷間に落っこちた“小ネタ”を自力調査する福岡在住の雑学王・Y氏。

この二人の化学反応の舞台裏を、思い切って聞いてみた。

住んでいる人が遊んでこそ、
「面白い」。

「福岡の西鉄電車に乗って謎をとく街歩きイベントをやりたい」
そんな相談を受けて、ふわりと福岡に降り立ったのがはじまりでした。
そもそも私、「西鉄電車」にすら不案内、住んだことだって一度もない。
だからもちろん、ノープランで。
それで、やって来てみて、どうでした?
いやあ、歩いてみるとなんか意外に面白い、と。
天神のごちゃごちゃな感じのところに、いきなり神社が出てきたり、電車に乗れば、すぐ近くに重要文化財があふれていたり。
天神からこの距離なのに道すがら「菅原道真」が残したっぽい遺跡があちこちに…。
こりゃ、面白い!こんな街の魅力を生かしたゲームにしたいな、と思いました。
福岡は街の機能と観光機能が混在していて面白いんですよね。
ただ観光ってことになると、一方で“住んでいる人”が面白さを感じないでしょ?
私、住んでる人でも街の魅力を再発見できるゲームにしたかったんです。
初めての街なので、私も面白くなって「これ、なんだろ?」「なに!?このオブジェ」と思ってなんでもすぐ調べるようにしていたんですよ。
そうしたら、やたらとヒットしてくるサイトが「Y氏は暇人」だったんですよね。
「この面白いマンホールは私の方が先に見つけたでしょ!」って思って念のためインターネットで検索すると、もうY氏に取り上げられていて、街の面白ポイント発見マニアとしては、途中で対抗心を燃やし始めたほど。笑
でもY氏のサイトにある情報が本当に面白く、福岡の魅力を体現していると思ったので、すぐにコンタクトをとって、この謎解きトレインに協力いただきたい!とご連絡しました。
僕も、謎解きゲームのことは知っていたので話をいただいた時はすごくうれしかったです。
福岡って、ここぞ!という観光地は案外少ないんですよ。
太宰府や柳川、近くても博多とかキャナルしかないイメージ。
けれど、その谷間にある“ちょこちょこしたもの”はけっこうあるぞ、と思っていたので。
そういうのを拾っていけるようなコンテンツってすごくいいな、と思いました。
意外とありますから、知ってそうで知らないってのが…
だからこの街は “謎解きゲーム”には最適だったのかもしれません。

“古地図オタク”との出会い。

ところで「リアル脱出ゲーム」って知ってました?
その名前、最近やたら聞くなあというくらいの感じ。
正直、ウルトラクイズみたいな?なんて思ってました。
そうですよね。で、実際に会ってみよう!となりました。
はい、そうでしたね。
Yさんのブログは、街に対する掘り下げ方がハンパないので「こりゃ、もうゼッタイ“大学教授”みたいな方がくるんじゃないか。」と覚悟してたんですよ、実は。
ああ…よく言われます…。
古地図持って、メガネをかけた厳格な雰囲気の方が来るかと…。
そしたら、なんと、若い!えっらいさわやかなイケメンだったので、「替え玉か?」と思いました(笑)。
この人があのマンホールとか調べてんのかなと思うと、「この人の能力の底力を生かすのが本当に正しかったのか」と不安にさえ…(笑)。

スッゴい比率で出てくる、
二人の偉人。

さて、ネタバレにならない程度にですが、どうでしたか?
一緒に「福岡謎解きトレイン」つくってみて。
福岡に住んでない人から見た“福岡のココが面白い!”みたいなポイントを教えてください。
もう何が面白いって、不思議なことに謎解きのネタを作っていると必ず二人の人物が出てくるんですよね。
一人は「神宮皇后」。
そしてもう一人は「菅原道真」。
どんなネタも何かしら結論はその二人にたどり着く!
ははは!そうですね。
南の太宰府なんか、道真ばっかりですしね。
そのあたりの神社は大半、そうですよ。
けれど、知っているようで知らないことって福岡はすごく多いと、僕はあらためて知りました。
菅原道真が京から太宰府にやって来たことは知っていても、“この街に何を残したか”とか、それを言える人はそういない。
だから地元の人こそ、この「福岡謎解きトレイン」に面白さを感じてもらえるとのではと思っています。
“ちょっとだけ知ってる”を、電車に乗って街を歩くことで深く理解できるようになる仕組みですから。
そう!当初、謎解きネタを作るにあたっては、実際のゲームの問いには無い駅にもまず降りてみたんです。
そんなことを積み重ねていたら、街の輪郭がわかっていって面白かった。
「これはおそらく福岡の人も知らないだろうなあ」と思えるものとの出会い。
ふだんは気づかなくても、知って街を歩くと楽しいだろうなあというモチーフが意外にたくさん隠れていたり…?
ええ。そもそも福岡の“田舎過ぎず、都会過ぎず”という街の佇まいこそが、“お散歩面白スポット”がちりばめられる理由なのかも。

ここでは言えないけれど…!

具体的にはどの街がお気に入りでしたか?
「雑餉隈」!かなりのディープさですよね。
実は、謎解きネタとしてはボツになったんですが、それでも私たち謎解きディレクターたちが一番、テンションあがってた街なんです。
ぜひ、行って欲しい!もちろん、もし時間があればそのほかいろんな西鉄沿線の街にも降りてみて欲しいんですけどね。
雑餉隈の「今」の景色は「今」しか見れないんですよ。
都市整備で今後は沿線の高架が上がるなど、景色が日々変わっていくエリアですから。
福岡はけっこう地域ごとに特性が強いですよね。
雑餉隈はあのごちゃごちゃ感がいいし、その一方で「百道」みたいにキレイに整備された街もあり、それらが至近距離、狭い範囲に凝縮してる。
だからこそ街歩き、街を巡りやすいのかもしれませんね。けれど、Yさん。
どうしてそんなに街ネタを持ってるんですか?
最初のころは街を歩いてひとつ石碑を見つけたら、そこでしらみつぶしに調べてみる…
そんなことを繰り返していたんです。
けれどさすがにこれには限界がある。
「中央区は制覇したかなあ」なんて思っていたころ、僕のブログを読んでいる人がだんだん教えてくれるようになったんです、とっておきのネタを。
つまり、ネタが自動的に集まるようになっていったというか。
「やり尽くしたと思ってもまだまだ全然いけるじゃん!」と?
はい!
ただ、あまりここでは言えないんですけど、“戦の時に〇〇〇が△△△の耳を×××して…それが僕の家の庭に塚として残っているんです”なんてたぐいも…いっぱい…。封印しているそんな黒歴史、今度オフトークでゆっくり…笑。

あったらいいな、こんな電車。

私、地下鉄はすこし苦手なんですけど路面電車は大好きなんです。
適度なスピードで走ってくれるから、見ているだけで景色がだんだん変わっていくことを色濃く実感させてくれる。
天神~太宰府間なんて、たまに『旅人※』がやってくるんですから、電車の宝くじ感、たまんないですよ!
※西鉄の特急車8000系の1編成をラッピングした専用列車で、正面に大きく「旅人」と記してあるほか、車体側面には太宰府ゆかりのイラストが描かれている
車内には“おみくじ”もありますしね!
そうですよ!毎日ふつうに乗るモノに“毎日結果がかわるおみくじ”がインストールされているなんてスゴいです。
もっと世の中の電車がこんなふうに楽しくなればいいのに。
そういわれればそうですね。
あまり知られてないけど、ビアトレインとか西鉄電車にはそのほか企画乗車券が20種類くらいあるんですって。
この「謎解きトレイン」もそのひとつ。
電車の各駅にその周辺の古地図が見られるアプリもあればなあ。
昔の景色と今の景色を見比べるだけでもまあ楽しいですよね。
窓をスクリーンにプロジェクションマッピングでコラボする、とか。
いつかそんな夢のある電車が登場したら楽しいですね。
そしたら、また新たな街の再発見につながるし…。
吉村さん、今回の「謎解きトレイン」も、みなさん、やってみて後悔はしないですよね?
もちろん!街を歩く楽しみをすぐにわかってもらえるはずです。
それに、ふだんの謎解きだったら“謎を解いたら次へ行く”~そこでまた次の謎物語に出会う、という仕組みなんですよね。
たとえば次の駅では“ドラゴンに襲われた!”とか。だけど今回は「謎を解いてその場所の秘密を知る」という一定したルールにしているんです。
つまり、その場所、その場所が、その人たちにとって自分が発見した秘密の場所になったらいいな、と。
目的があって旅をするのではなく、とにかくふらふら歩いてみたところ、面白い人に出会って次の場所へ行くみたいな…
ガイドブック以外の旅の仕方を、一緒になったプレイヤー(参加者)たちと見つけられるとか。
そう、「謎解きだあ!」というより、ちょっと面白い旅に4時間出てみる、くらいの気持ちで。
「そこで出会う食べ物だったりを楽しみ、同じゲームをプレイしている仲間たちと関わりを持つことでアナタだけの4時間の旅を完成させてください」ってお伝えしたいです。
そのために私は“いいとこだけその装置、用意しました!”という気持ちなんです。
ぜひ、自分で、自分の旅を作って、そしてめいっぱい楽しんでください♪
本当にそうですね!今日はありがとうございました。
こちらこそ!せっかくですから、最後に、Yさんのブログをご紹介いたしますね♪