ふじたたまみ(以下、ふじた) 「マグノリア銀行からの脱出」はもう、色々なプレッシャーの中で生まれたんですよ。初演は2012年3月の大阪HEP HALLでしたが、その前年にHEP HALLで行われたのが「人狼村からの脱出」、その前の年が「ある飛行機からの脱出」と、評判のいい公演が多くて。
HEP HALLではハイクオリティな作品を何が何でも名作を作らねばならないというプレッシャーがありましたね。しかも、今まで公演を関西で一緒に作っていた社長は東京の仕事にかかりきりになり、HEP HALL公演をメインでディレクションするのがはじめてで。作り始めてまずぶつかったのは、“どこから脱出するか問題”(笑)。
ふじた マグノリアを作ってから1年半くらい経ちましたが、当時からすでにココには頭を悩ませていました。飛行機からも脱出したし、宇宙船からも脱出したし、夜の学校とか夜の遊園地とかももうあらかた脱出していて、使い尽くしたんじゃ……と。
でも、目を惹くって意味では、意外な場所よりも、掴みやすい場所がいいと思ったんですよ。誰もが知っている場所で、「~~からの脱出」と言われてすぐにパッとイメージできるもの。それで、あれこれ案を出しているうちに、「銀行」から脱出すればいいのでは? しかも、お客さん側が泥棒になればいいのでは? と設定が決まっていきました。
ふじた そうですそうです。リアル脱出ゲームに関わらず、SCRAPのイベントはどれもそうなのですが、キーワードは“物語の主人公になれる”という点なんです。どうしても“謎”や“パズル”が注目されていますが、“謎”は手段でしかない。謎解きって、解いたり考えたり指示をこなしたりと、自分が能動的にアクションを起こせるものなので「主人公になること」が目的のSCRAPイベントの手段として相性がいいんでしょうね。
遊園地のアトラクションのように、黙って乗り物に乗っていたら勝手に進んでくれる、というのではなくて、チーム戦の謎解きなら、みんなでうまくコミュニケーションとって自分たちの手で進めていく。ここが“リアル”だなーと思っています。
ふじた マグノリアに関しては両方ですね。昨年私がディレクションを担当した「眠れる森からの脱出」は、もういくら難しい謎を作ってもお客さんのレベルがどんどん上がっていたちごっこだなと思って、世界観と驚きに力をいれたのですが。マグノリアは演出も凝っているし、謎も難しいです。
ただ……、そういえば、2012年3月の大阪での初演の次に、2013年5月に神戸で再演したのですが、大阪でやったときは“鬼のような難しさ”と言われたのに、神戸では脱出率が上がったんですよね。コアなリアル脱出ゲームファンは大阪の初演ですでに来ていると踏んで、脱出率下がると思っていたのに……。皆さんおそらくこの再演までの1年ちょっとの間に行われた様々な謎解きイベントに参加されていたようで、お客さんのレベルが驚くほど上がっていたんです。
ふじた そうですね。リアル脱出ゲームの大都市以外もまわる全国ツアーとしては第三弾になるのですが、最初が人狼村と金田一、二回目がコナンで、そういった有名作品の看板がない純粋な公演としては人狼村以来なんです。そういう意味では気合いも入っています。
すでに東京では開催が始まっていますが、ルパンの格好や、目出し帽をかぶるなど、コスプレして泥棒になりきってくれていたり、Twitterに「何月何日何曜日何時に機密文書をいただきにまいります」と予告状をツイートしていたりしているのを見るととても嬉しいです。自主的に“物語の主人公”になろうとすればするほど楽しめると思うので。
ちなみに、横浜の会場は、過去に本当に銀行だったんですよ(※旧第一銀行横浜支店)。本物の銀行は強盗できないけど、全国の「マグノリア銀行」の支店は強盗できるので、ぜひ盗みに来てください! 万全のセキュリティでお待ちしています。