スーパーペーパーキングダムからの脱出舞台挨拶 コンテンツディレクターインタビュー

公開日:2021/08/04

2021年6月24日から吉祥寺店を皮切りにスタートした全国ツアー「スーパーペーパーキングダムからの脱出」。

先日、SCRAPファンクラブ「少年探偵SCRAP団」限定の「舞台挨拶付き公演」が開催されました。
その終演後に行われた、コンテンツディレクターによる舞台挨拶の模様を一部抜粋してお届けします。

インタビュー・文:青木たつや

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ーーまずは安岡さん自身のことを伺いたいのですが、SCRAPに入社してから今のポジションになるまでの経緯を教えてください。

安岡:入社は8年くらい前です。元々はリアル脱出ゲーム京都店の店長をしていたんですが、加藤社長から『コンテンツチームに入るなら何やりたい?』って聞かれまして。元々シナリオライターに興味があったので『東京ドームダンジョンからの脱出』でシナリオを書かせてもらったりしました。

ーーシナリオは最初から苦労せず書けたんですか?

安岡:チャレンジした、という感じですね。大学時代に友人と漫画を描いたり演劇やったりしていたので、そういった経験を活かせたらいいなと思っていました。最近では『地下謎』シリーズや、脚本では『ラブライブ!』とのコラボシリーズや『青梅雨に届いた手紙』などを担当しました。

ーー前作の名古屋で開催された『ペーパーキングダムからの脱出』にも関わっているんですか?

安岡:ガッツリ関わってます!染川さんと2週間で作り上げました。

ーー2週間で!?

安岡:濃密な2週間でしたね。名古屋のウィークリーマンションに泊まり込んだんですが、染川さんと2人いるのになぜか会社がシングルの部屋を確保してて…(笑)。そこでアイデア出しを繰り返して作ったのが前作です。名古屋でしか開催していないのでいつか再演したいですが、あれは美術造作が凄くて…なかなか準備するのが難しいんですよね。

ーー今回はその続編となっていますが、なぜこのタイミングで第二弾を作ることになったんですか?

安岡:元々ここ(吉祥寺店)で全然違う企画をやろうと思っていたんです。でもそれが会場サイズの関係で実現できなくなってしまって。なにか代わりになるものを決めないといけないぞと。
ちょうどその頃、自分が参加したエンタメはコロナを意識したものが多かったんです。それも好きなんだけど、反対にファンタジーが減っていたタイミングでもあった。それなら日常に対して頑張るぞと思える作品ではなくて、いっそ日常を忘れられるファンタジーがあってもいいんじゃないかなって。
更に吉祥寺店のスタッフが『自分は名古屋のペーパーキングダムに参加したことがきっかけでスタッフになったんです』と言ってくれたんです。じゃあ吉祥寺店のホールを使ってペーパーキングダムを作るのはどうかなという話になりました。

ーーそれで第二弾を作ることになったんですね。

安岡:素材を使ったギミックや、紙の世界を冒険している感じをホール公演でどうやって出そうかなと思ったんですが、そこで今回の紙芝居システム(各チームのテーブル上に紙芝居のようなパネルが設置されている)を思いつきました。飛び出す絵本みたいな仕掛けがあったり、ボードゲームのようなパズルがあったり、ページをめくることで紙の世界をどんどん冒険しているゲームが作れるんじゃないかなと。更にチェックポイントでは壮大な人形劇が繰り広げられていたら楽しいだろうし。
これは裏事情ですが、ルーム型だとあまり多くのキャラクターを登場させるのが大変なんです。でもホール型はチェックポイントの移動があるので多くのキャラクターを登場させることができます。そうすることでルーム型とは違った角度で冒険感を演出しました。

ーー今回、美術チームの協力もかなりあったと伺いました。

安岡:そうですね、美術チームも実質的にコンテンツチームのような存在でした。紙芝居システムのギミックをどうすれば成立するのか、どうすれば頑丈になるのか、などたくさん相談に乗ってもらいました。中には美術チームが考えたと言っても過言ではない謎もあります。
美術チームには、ディズニーのリトルマーメイドのショーをイメージして大きな紙人形も制作してもらいました。今回、人形劇団の『ひとみ座』さんに監修していただいたので、紙人形の構造などのアドバイスをもらいつつ、それをまた美術チームが修正する…といった流れでブラッシュアップしていきました。

ーーひとみ座さんからはどのようなアドバイスをいただいたんですか?

安岡:最初はカミーユの持ち手がもう少し長かったんですが、短くしましょうというアドバイスをいただきました。理由を聞いたら、紙人形が演台の後ろにハケるとき、元々の長さだとカミーユの身体を倒しながらじゃないとすっぽり隠れないんです。そうすると倒した瞬間にカミーユは命をなくした『人形』になっちゃう。だから身体を倒さずにハケさせるためには適切な持ち手の長さがあるんだよ、って。目から鱗でした。

ーーなるほど。

安岡:ただオテントは太陽なので、陽が昇ったり沈んだりするように、身体を倒しながら出ハケしても自然に見える。だからオテントだけは最初から持ち手の長さが変わっていません。
あと参考になったのは、あえて静止画を作るという技術です。漫画って、静止画なのにちゃんと動いているように見えるじゃないですか。悟空がかめはめ波を撃つシーンは、どっちに飛んでいるのか分かりますよね。細かい動きがあまりできないという点で、人形劇は漫画に近しいんです。
例えばキャラクターが喋るシーンでは、細かく身体を動かすのではなく、決めセリフだけピンポイントで身体を動かす。そしてピタッと静止する。そうすることで動きにメリハリができて、まるで人形が生きているように見えるんです。セリフのセンテンス毎に動きをつけることで躍動的に見えるので、今回の人形劇ではその手法を取り入れています。

ーー現場では安岡さんがスタッフに演技指導をしたり、公演全体のディレクションをしていたと思うのですが、こだわった部分はありますか?

安岡:プレイヤーとキャラクターが一緒に冒険しているような感覚にしたいと思いました。各チームに色んなキャラクターが話しかけに行ったりして、まるで日本じゃない場所にいるような体験をなんとしてでも表現したかったです。

ーー登場するキャラクターたちは非常に魅力的ですが、彼らには細かい設定も存在するんですか?

安岡:設定リストがあって、そこには性格や幼少期の思い出などが書かれています。例えばカミーユは木に足を引っ掛けて破れてしまっているとか。段ボールのダンくんは厳格な家庭で育って、なにかミスをしたら自分が親から見離されてしまうんじゃないかと思いながら生きているとか。色々あります。

ーー改めて、今日で公演3日目が無事に終了しましたね。

安岡:自分がメインとなってリアルな公演を作るのが久し振りだったので、お客さんが楽しんでくださっているのを見れて良かったです。緊張もありましたが、エンドロールで拍手が起きた時はグッときましたね。

ーー最後はキャラクター全員に向けて拍手が起きていましたね。
今回はペーパーキングダムの続編という位置付けですが、今後、安岡さんが作ってみたい設定などありますか?

安岡:実際に身体を使って物語体験ができるゲームが楽しいなと思っているので、身体性の高い公演を作ってみたいですね。自分の作品で言うと『追跡者Xからの脱出』が近いんですが、実はトラップゲームはあれしか作っていないので、また新作も作りたいなと思います。あとはペーパーキングダムも、今回のホール型を経て、またルーム型に逆輸入したらどうなるんだろうな…なんて考えています。楽しみにしていてください!

PROFILE

安岡 潤也(やすおか じゅんや)

SCRAPシナリオライター/コンテンツディレクター。
主な担当作品は「地下謎への招待状2019」「謎特異点Ⅱ ピラミッドからの脱出」「追跡者Xからの脱出」など。