あ、オレ?旅人。
とか、平気な顔で答えるんですよ。

18歳で初めてタイに行って以来、大学生の時分はいわゆるバックパッカーでした。
学校行かずにバイトばっかりして航空券代+5万円稼いだら、5万円で続けられる限り長く旅するぜ!を目標にアジアアフリカのどこかへ旅に出ていました。大学生=私たち何をしても許される年頃よ。と思って生きてました。

で、旅先の国で、もう学生ではない年齢の日本人に出会うと、この人仕事しながらバックパッカーもしてるなんてなんて理想の大人像!と、そりゃもうめっぽうキラキラして見えるわけです。実際欧米の人なんかは、オー、ワタシ2年会社休ンデ世界一周シテマース。みたいな人わんさかいるんですよね。

で、聞くわけですよ。
こんな長く休み取れるいい会社、日本にもあるんすね。どんな仕事してるんですか?
で、返って来る返答が冒頭の
「あ、オレ?旅人。」ですよ。
あぼーん、ですよ。
あぼーんって擬音、最初に考えた人すごいなぁ。当時はまだそんな秀逸な擬音、この世になかったけど、振り返るにつけまさしくあぼーん、ですよ。
絶対こんなダメな大人、自称旅人、なんかにはならないぞ絶対にだ!と心に誓って早十余年。ある日蓮舫がやって来て、日本の成人を自称旅人、と、ちゃんとした社会人、に仕分けます!必要のない人間は切り捨てます!とか言い始めたら、くっきりとものすごく濃厚な自称旅人側に仕分けられる色に染まり上がってしまいました。そもそも私の理想の大人像、寅さんですもん。その上まったく旅にも出ないもんだから、自称旅人よりさらに悪質な、丘旅人、ですよもはや。
敷かれたレールに乗り切れずかと言って踏み外し切るのも怖くて、のさっともさっと生きながらえてたら、なんかいつの間にか自分の歩けるスペース、レールの間の更に枕木と枕木の間の石コロの転がったゴツゴツしたとこだけだったよ。みたいな人生ですよ。どこ、までも、行けるような気がしてた、でも寒くて、とても寒くて歩けなーい。もう、歩けないよーおうおおー。焼け野が原ですよ人生。

バックパック背負ってアジアを周ってた頃、世界中を飛び回る仕事につきたいな、と思っていました。最後に海外旅行してからちょうど10年。上海に仕事でやって来ました。タクシー乗ったりシャワー、エアコン付きのホテル泊まったり、色々と貧乏旅行精神に背いた毎日を過ごしておりますが、これでようやく丘旅人から自称旅人にはランクアップできそう。もし旅の途中で日本人学生のバックパッカーに会ったら、あ、オレ?旅人。って答えてあぼーん、てさせてやるんだ!


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