ちょっとした会合で披露できるこざっぱりとした引き出し、をほとんど持ち合わせていない。また、そもそもこざっぱりとした引き出しに興味がない。
こざっぱりとした引き出しを引き出す用意が常にあり、しかも他人が引き出してきたその引き出しの中身を、程よい塩梅で整理整頓できる人のことを、ちゃんとした大人というのだと思う。私はどちらもできないので、ちょっとした会合においては常に引き出しを閉じ、かつ他人の引出しも引き出せずちぢこまってしまう。
こういうクズみたいな人間にとって最も危ういシチュエーション。それはドライブである。一対一である上に、私は免許を持っていない。
そして助手席に座った人間にはなんとなく、ドライバーを退屈させてはならぬ、という責任感が備わる。
がしかし、先述の通り私はほどよい引き出しを持ち合わせていない。がしかし、喋らねばならない。
嫌われてもいいどうでもよい人であればよい。
思うままいくらでもすべての引き出しを閉じ鍵までかけて、こいつはなんてつまらない人間なんだ!と思われたって構わない。
いやむしろ、そう思われた方が好都合だ。未来永劫、私の引き出しは開かない。開かずの引き出しですよ、ってなもんだ。
しかし一対一で車に乗っている時点で、相手が嫌われてもいいどうでもよい人である可能性は、著しく低い。そもそも嫌われてもいいどうでもよい人と一対一でドライブなんて状況あるだろうか。あ、タクシーか。
そうかだからタクシーが苦手なのだ。
タクシーのドライバーさんは、嫌われたってかまわないどうでもよい相手、ではある。しかしそういった相手にも関わらず、なんとなく感じ悪くはできない。なんなら常にへりくだって接してしまう。
それはタクシーは成功者の移動手段だと思っているからだ。なのでタクシーを使用する際は、アッシのようなコモノがタクシーなんていう高級品使っちまって、しかも大した距離を乗りもせずあいすみません。
という卑屈な姿勢のもと、一大決心を持って乗車する。であるからして、タクシーのドライバーさんには目上の人感、をビンビンに感じるのだ。だもんでドライバーさんに話しかけられた途端、目上の人を楽しませなければ。という責任感が生じる。
しかし再三言うように私にはほどよい塩梅の引き出しがない。
突然初対面のドライバーさんに、母がボケましてね…と、話しだすのはちょっとヘビーすぎる、というくらいのTPOはわきまえておる。そこでドライバーさんが引き出して来るしょーーーーもない引き出しを覗きみる努力をせねばならぬ。
ドライバー:お休みはいつからですか?
いけ:(うわ来た)あー、30日くらいですね
ド:いいですねー。私らなんか暮れも正月もないですからねー云々...
↑
来ました!ここ、ここ引き出されたら思いっきり前のめりで手突っ込んで引き出し覗かなきゃいけないポイント!
わかっちゃいるんです。いや、わかっちゃいるからこそ、そこいじんのめんどくせーなー、みたいな、あーでも、いじんなきゃ感じ悪いやつだと思われちゃうなー、あーでもどうでもいいなー、この人の休みの少なさとかいつからいつまで休みとか休みどこ行くとか休みだけどどこも行かない寝正月なんですよーとか家族構成とか生まれがどことか実家の母親ももういい歳なんで孫の顔見せてやんないとねーとか、どーーーっでもいいな、聞かなきゃダメすか?
と、話しかけられた時点でもういっぱいいっぱいになってしまい、心の汗が止まらないッ!状態になってしまった挙句
たいへんですね。おつかれさまです!
精一杯の感じのよいトーンを振り絞り、こう言ってしまう。これはドライバーさんからしたら0点の返答だ。
いやおい待てよ。チョ待てよ。今からいかに年末が忙しいとか最近は不景気で夜流してても短距離しか乗ってくれないとか景気よかった頃は京都まで行ったことありますよ高速乗ってねーとか、娘が今度小学生でランドセル買いに行ったんですけどアレですね、最近は赤と黒だけじゃないんですね、いろんな色ありましてね、ウチのなんて女の子なのに青いのがいいとか言い出しまして。まあ女だからピンクがいいとかそう言う時代でもないんですかね、いやしかしあれは違和感がありますねー。とかそういう話を経るための前振りであり、長年の経験から、この出発点からこの目的地までなら何分かかるから今回はランドセル話はカットしたバージョンで話そう、そうすると目的地2分くらい前に話し終え、お客さんに「大変ですねー」なんて言われるからそしたら「いやいやお客さんこそこの年末にこんな時間までご苦労さまですね。だいたいもうこの時間って言ったら99%酒飲んで帰る方ばっかりですからね」なんつって、お客さんも立てて降ろそう、みたいな計算もしてたのに、ロクに話も聞かず、何いきなり「大変ですね」繰り出しちゃってくれてんの?
ってなっているに違いないのだ。
わかっちゃいるんです。いや、わかっちゃいるからこそ、もう全部先回りして聞いたことにして話終わらせちゃいたくて言ってしまうのだ。
おつかれさまです。と。
いけ疲労困憊。ドライバー不完全燃焼。気まずい空気が漂う車内。
この、他人の引き出しの整理が上手い人は心の底から尊敬する。
先日も、程よい引出しの引き出し合い合戦とも呼べる、久々に会う友人との忘年会にうっかり参加してしまい、当然何も引き出さず引き出されず、ひたすら愛想笑いを浮かべたまま2時間くらいが経過し、ご一行全体に酒がマワって来た頃、その中では比較的気を許した友人Aが「どうでもいいことなんだけどさー」と話し始めた。
この「どうでもいい話してもいい?」という前置きは、聞き手のハードルを下げるのに効果的だが、その前置きをもってしてもあまりにもどうでもよすぎる話で、もう全く内容は覚えていないのだが、とりあえず愕然としたので、どうでもいいにもほどがある!と一喝して済ませようとした矢先、私とその友人の間に座っていた友人Bが、そのあまりにもどうでも良い引出しを華麗に整理し始めたのだ。
どうでもいい引出しの整理であるからして当然Bが何を話していたのかも全く覚えていないのだが、会話のキャッチボールは際限なく繰り返される。
へー、てことはナニナニがソレソレ?
すごいねー、私はナニナニはコレコレするけど、そういう場合もソレソレ?
えー、でもソレソレだとコレコレがアレコレだよねー。
投げるボール返すボールのひとつひとつがどうしようもなくどうでもよい。しかしこんなにもどうでもいいボールが一切のタイムラグなく、すっと投げ返され続ける。言えば言うほど悪口にしか聞こえなくなってくるが、私はその時、心底感動したのである。
こういう人になりたいと思ったのである。思ったかな?まあ、なれたらいいな、とは思ったかもしれないのである。
そこで思わず、ほぼ上記のままの感想を伝えた。ら、場の空気がもんやりしてしまった。生きるってたいへん。
これが知人とのドライブとなるとさらにやっかいだ。
クエンティンタランティーノくらいの緊張感だ。
つまらないやつと思われるかおもしろみのある人間だと思われるかのタイマン勝負。生きるか死ぬか。デッドオアアライブ。
だがとにかく私の引出しはしょっぱいかすっぱいか苦い味のモノしか入っていない。
基本的に食べ慣れない味のものばかりで、下手に引き出すと自分ばかりか相手も傷を追ってしまう。
というわけで、弊社代表とはじめて長時間ドライブをした際、うっかり引き出してしまったしょっばい引出しをご紹介します。
私は小学2年生から自分のためのヒットチャートを作成している。
毎週である。100位までである。全盛期は200位までつけていた。
自分のためのヒットチャート、と言ってもただ単に好きな曲を並べるわけではない。
まずは好きな曲を1~100位まで並べ、9999点を最高点としたポイントを付ける。
お気づきの方もいるだろうがこの点数はザ・ベストテンでの最高得点になる。
この点数をたたき出したのは本家ベストテンでも西城秀樹のヤングマンだけなので、敬意を払って9999点満点はほぼつけないようにしている。
で、これにオリコンランキングの売上げ枚数を加算する。
100枚で1ポイント。つまり1週間で100万枚売れたら10000ポイントが加算される。
さらにビルボードのポイント、FM各局のチャートを元にしたラジオプレイポイント、大手輸入レコード店のヒットランキングポイントを各1位を500点として加算していく。と、いうのをずーっと続けていた。
中学生の頃はまだインターネットなんてものはなかったから、ラジオにかじりついて、クリスペプラーの無駄に流暢な英語の発音をがんばってリスニング。
それを元にタワレコとかで一生懸命似たような名前のモノを探し、これだ!と見つけたら正しい綴りで清書。
そんなこんなで洋楽邦楽アイドル演歌の入り交じった、自分の好きな順とは全く違った自分チャートが完成する。
それを地元の友&愛(レンタルレコード屋さん)で借りて来てひたすらカセットに録音する。全然好きじゃない曲も入れる。で、聴く。
MDが出て来た時は感動した。テープの最初の透明な部分を巻く必要もないしA面に入る時間数を計算する必要もない。しかも省スペースである。
itunesが出て来た時にはもっと感動した。最初は味気ないなと思ったけど、使って行くうちにこれはもはや自分のために神様がつくってくれたモノじゃないか。とすら思えた。おこがましい。
エクセルにも感動した。毎週々々ノートに細かい字でしたため続け、そして計算機で計算しまくったその作業が、あっという間に計算され素早くチャート化されていった。
年間チャートの並び替えもあっという間に終わる。
年間チャート。そう。これこそが自分チャートの本当の醍醐味である。
そこにはもう自分の好きな順、というわがままな指標は介入できない。
毎週つけてきたチャートの合算であるが故、どうしたって基本的には世の中のヒット曲が上位に来る。
しかし自分の好きな曲も、好きな曲であるゆえに一年を通してずっと聞いているので、チャート下位で一年中しぶとく残っている。
ヒット曲は発売週のポイントはものすごく高くなるが、比較的短期間で姿を消す。
自分の好きな曲はポイントの積み重ねが大きく、どちらが勝つかは年間52週のポイントを足してみるまでわからない。
ああもう、たまらない。ものすごく興奮する。
で、それを並び替えて1位から順番に聴く、のがまたたまらない。全然好きじゃないアーティストの曲が好きになったりもする。
自分チャートとは、そういうものである。
と、いう話を弊社代表にうっかりしてしまい、話したそばから後悔の念が溢れ出るものの止まらなくなってしまったのでした。
というわけで唐突ですが次回は2012年の年間自分チャートを発表します。
誰得!ってまさにこのときに使う現代用語ですが気にしません。
ただ、ここ2年は自分チャート作成を怠っており、年間チャートしかつくっていません。
・2011年12月~2012年11月までに発売された曲の中で、自分のitunes再生回数上位200曲をポイント化
・オリコンとビルボードの年間チャートをポイント加算
したものが今回のチャートになります。
2013年の目標は、また自分チャートを毎週つけることです。
忙しいフリしてすっかり音楽聴かなくなっちゃったけど、やっぱり音楽を聴くことが大好きです。今年はライブにもたくさん行きたいな。
本当はもっとがんばるべきことはたくさんある気もしますが、
とりあえずチャートがんばるぞ。
ちなみに紅白歌合戦も大好物ですが、今回の個人的トピックは
白組が勝ったのは美輪さんのおかげってくらい圧倒的だった
SKE48とももクロの真剣勝負、ぼくはSKEが勝ったと思う
EXILEってやっぱすげーなー
舘ひろしの伴奏すごくかっこよかった
水森かおり、幸子の意志を継ぐ
冬のリヴィエラやっぱいい曲
せっかく久しぶりに紅白出たのに、細川たかしの乱痴気騒ぎのせいで半分もステージで歌えなかった香西かおりかわいそう
その香西かおりの酒のやど、めっちゃいい曲
関ジャニにがものすごく紅白っぽくてよかった。今年は中村美津子出てなかったけど美津子枠を担える勢い
サブちゃんの口に紙吹雪が入らないように風が吹いていた。すごい。
で、風が吹きまくったあとのいきものがかりが「風が吹いている」で感動した
菅野よう子、審査員のくせに衣装替え過ぎ
堀北真希の司会よかった
堀北真希と綾瀬はるかのツーショットよかった
途中一瞬中居くんが司会したときのニッポンの大晦日感ハンパなかった
審査員席で樹木希林が楽しそうだとなんだかホッとする
お願いだからちあきなおみさん、いつか紅白出てください
本年もアジトオブスクラップ、ヒミツキチオブスクラップをよろしくお願いします。
もどる